北海道八雲養護学校
 

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平成23年度 校内実践研究


Ⅰ 研究計画について


1 研究主題


児童生徒の病種や障害種に対応した専門性の高い教育の充実を目指して


2 研究主題設定の理由と目的


 本校は、病弱教育を専門とする特別支援学校であり、全国でも数少ない神経筋疾患を専門とする学校である。そのため、本校は病弱、特に神経筋疾患の教育の専門校として、病気や障がいに対して教育的かつ医療的な配慮を基にした質の高い教育を追求していくことが課題となる。全国的に見ても病弱特別支援学校への在籍が減少傾向にある中、本校も例外ではない。今ある集団を活かした教育実践を行い、神経筋疾患を専門とする学校の研究成果を集積・発信することは、全国的な見地からみた本校の使命と考える。一方で、本校は北海道北渡島地区に位置する特別支援学校である。近年、近隣学校から教育的支援、教育相談へのニーズが高まりをみせてる。これらの教育的支援もまた、地域の特別支援学校が有する使命と考える。
 昨年の研究成果として以下の三点が挙げられる。一点目は病種や障がい種に絞って研究を行ったことでより児童生徒の実態に合った指導や実践ができたことである。二点目は、複数のテーマで実践を行ったことで本校児童生徒の抱える様々な課題に対する教育実践が行われたことである。三点目は、医療や教育におけるアカデミックなデータに基づいた研究が有効なものであったことである。
 これらのことをふまえ、今年度の校内研究は昨年度の研究の成果を活かし、児童生徒の病種や障害種に対応した専門性の高い教育の充実を目指すものとする。疾患や障害の程度により教育課程が異なるため、テーマを一つにするのではなく、各職員の希望を取り、担当している児童生徒の実態に応じた様々な教育実践を研究の対象としたい。病弱における専門性の高い教育=日々の授業力と捉え、日常の教育実践を対象とした研究とする。


3 研究推進の方法


  • 単年度の取り組みとする。         
  • 研究内容の希望をとり、病種と実態に応じてグループを分ける。
    (研究内容によって3~4名程度)         
  • グループごとに、研究主題に対応したテーマを設定して取り組む。         
  • 専門性の高い教育の充実を目指し、授業研究を主体とした研究を行う。         
  • グループ内で、互いの授業を見合う機会を設定する。(ミニ授業研)         
  • 公開授業研究週間に授業を公開する。         
  • 推進は各グループで行う。         
  • 毎月1~2回を研究日とし設定する。         
  • 全校研究を2回行う。(5月と7月)         
  • 研究のまとめは2月の校内研究発表会で行う         
  • 紀要はCD-Rで作製する。

4 研究推進の日程


校内研究研究日
  
17日 全校研第1回(希望調査)31日(研究テーマと設定理由)
 14日(研究内容と方法の具体化)
28日(構想発表に向けて)
1日 全校研第2回(構想発表)19日(授業研究にむけて)
 19日(授業研究にむけて)
 10日(指導案の作成)
10 7日、28日(指導案の検討)
117日~18日 公開授業研究会実施8日(指導案の検討)
29日(授業の評価反省)
12 9日(研究のまとめ)
 31日(校内研究発表会にむけて)
10日、14日 校内研究発表会
24日 紀要原稿提出
 
中旬 紀要完成 

Ⅱ 研究の成果・課題について


1 研究の成果


(1)実践の成果


 平成23年度も児童生徒の病種や障害に応じた教育の充実を目指し、病種を基本として担当する生徒や指導教科によって希望を取り、小グループの研究を行った。神経筋疾患の児童生徒の研究は4つのグループ、重度重複障害の児童生徒の研究は2つのグループに分かれた。
 神経筋疾患の児童生徒のグループ研究は、各教科の指導をはじめ、基礎学力の向上、少人数学習における授業づくり、進路指導、キャリア教育の視点からの授業検討、と内容は多岐に渡った。
 小学部準ずる教育「各教科の指導」のグループは、児童生徒の基礎学力の向上を目指した研究を行った。昨年度の研究成果であるWISC-Ⅲ発達検査を用いた評価・分析を通した教科指導における効果的な指導方法に加え、各教科で持つ情報の共有化の有効性、個別授業における言語活動の充実を図る一つの方法としてSTの活用が示唆された。
 高等部、高等学校に準ずる教育「各教科の指導」のグループは、少人数学習に授業における生徒の課題として以下の4点を指導の柱に研究を行った(1 ICT活用の再検討と自主的に学ぶ環境設定、2 発言の場の設定による積極的なコミュニケーション、3 考察が深める発問や課題の工夫、4 一人一人のつまづきに対応した学力定着)。各教科で課題を共通認識して授業の展開や工夫を協議・検討することにより、授業改善できたことを成果とした。
 高等部、高等学校に準ずる教育「進路指導」のグループは、生きる力をコミュニケーション能力とマネジメン能力と捉え、卒業後の社会参加を目指した具体的な方向性を模索する研究を行った。全体指導である進路学習に向けた自立活動の取り組みを通し、個々の現状や課題が話された。
 高等部、重複障害のある生徒の教育のグループは、将来の生活につながる指導を目指し授業改善としてキャリア教育の視点から授業を検討する理論研究を行った。卒業後の生活がどのようなものなのかを見直すことや、そのために必要と考えられる力を検討し、本校生徒にとってのキャリア教育・キャリア発達について協議した。教師・生徒共に学ぶことへの意味付けや価値付けが必要であることが再確認された。
 重度重複障害の児童生徒のグループ研究は、小学部・高等部グループ、ベッドサイドグループである。
 小学部・高等部のグループは、児童生徒の表出を促す指導を目指して自立活動を実践の窓口に研究を行った。発達検査(MEPA-2)を共通で実施して児童生徒の発達段階を明らかにした上で授業を行うことにより、生徒個々の実態や課題が明確となり効果的な授業改善につながったことを成果とした。
 ベッドサイドグループは、学習環境に制限のある児童生徒の活動の幅を広げる授業作りを目指した研究を行った。身体的・医療的に制限が多い児童生徒にとって、自分の持っている力を生かすことや得られた知識や技能を活用することに課題があるとし、ICTの活用や記録の工夫を行った。限られた学習環境の中で活動を広げられる工夫について協議する中で、生活環境の把握や個別のアセスメントの重要性が再確認された。
 その他のグループの研究は、コーディネータによるセンター的機能の研究グループ、学校が抱える課題として支援機器(AT)の自主研究グループである。
 センター的機能グループでは、教育相談における支援の現状と課題について研究が行われた。支援の難しさとして「早期発見の難しさ」「介入の難しさ」があげられており、支援する側の立場によって児童生徒像や支援目標にズレが生じやすい現状が報告された。
 支援機器(AT)の自主研究グループでは、東京大学先端科学技術センターとソフトバンクグループによる共同プロジェクト「魔法のふでばこプロジェクト」に協力校として参加した事例の研究成果が報告された。iPadを教育現場で活用し、その具体的事例を研究・公開することで情報端末の有効性の広い認知に努め、障害児の学習を支援する「学習バリアフリー」に向けた取り組みが促進された。
 以上のように、児童生徒の個々の病種や障害に対応した研究を行うことができた。


(2)研究のまとめ


 今年度の研究では、研究主題を「児童生徒の病種や障害種に対応した専門性の高い教育の充実を目指して」として児童生徒の病種や障害に絞って少人数のグループを編成し、児童生徒のニーズや課題に対応した単年度研究を行ってきた。グループごとに多様なサブテーマを設定してグループ研究に取り組んだことにより、病弱教育における実践上の課題に則したさまざまな実践事例を蓄積することができたことは成果と考える。
 多様な実践事例の蓄積ができた反面、研究主題が広く全校研究としてのまとまりが不足していたことは反省点である。グループごとの多様なサブテーマの設定は実践上の課題を反映できる利点はあるが、仮説検証の視点が統一されておらず考察を深めるに至らない結果となった。これらの反省点は、今後の研究を推進する上で課題である。
 ここ数年、本校の目指す教育を「病弱教育、特に神経筋疾患の専門校として、児童生徒の病気や障害に対応した教育的かつ医療的な配慮のある質の高い教育である」と押さえ全校研究に取り組んできた。しかし、神経筋疾患の児童生徒数は年々減少傾向にある。今後は、少数疾患である神経筋疾患の児童生徒を対象とした実践研究の集積に加え、脳性まひを主とした重度重複障害の児童生徒を対象とした実践研究を深め、本校の独自性を発揮した病弱教育の研究を推進したい。


2 今後の課題


(1)研究主題の明確化
(2)仮説検証の視点を明確化して考察を深められる研究の推進
(3)児童生徒を対象とした実践研究