北海道八雲養護学校
 

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平成24年度 校内実践研究


Ⅰ 研究計画について 


1 研究主題


授業実践において、一人一人の良さを生かすことで、主体的に活動する喜びや力を身に付けられることを明らかにする。


2 研究主題設定の理由と目的


 本校は、病弱教育を専門とする特別支援学校であり、全国でも数少ない神経筋疾患を専門とする学校である。そのため、病弱、特に神経筋疾患の教育の専門校として、病気やがいに対して教育的かつ医療的な配慮を基にした質の高い教育を追求していくことが課題とされてきた。しかし、近年、神経筋疾患の児童生徒数は年々減少傾向にある。今ある在籍を活かした神経筋疾患の教育実践を行う一方で、研究対象を神経筋疾患に限定することく、在籍する児童生徒個々の実態に則した病弱研究を推進することが課題となってきた。
 昨年度の研究成果としては、研究主題「児童生徒の病種や障害種に対応した専門性の高教育の充実を目指して」に応じた多様なサブテーマを設定してグループ研究に取り組んだことにより、病弱教育における実践上の課題に則したさまざまな実践事例を蓄積できたこがあげられる。課題としては、多様な実践事例の蓄積ができた反面、研究主題が広く全校研究としてのまとまりが不足していたことや、仮説検証の視点が統一されておらず考察うを深めるに至らない結果となったことなどがあげられる。
 これらの成果と反省点をふまえ、今年度の校内研究では、少数疾患である神経筋疾患児童生徒を対象とした実践研究の集積に加え、在籍する児童生徒個々の実態に即した実践研究を行うこととする。研究主題を明確にして研究を推進し、グループ仮説に基づいた検証や考察をていねいに行う実践研究(授業研究含む)を目指したい。研究の推進に当たては、児童生徒一人一人の障害の状態や発達段階により教育課程が異なるため、各職員に希望を取り、担当している児童生徒の実態に応じた教育実践を研究の対象とする。


3 研究推進の方法

  • 単年度の取り組みとする。        
  • 類型ごとにグループを分ける。        
  • グループごとに、研究主題に対応したテーマを設定して取り組む。        
  • グループ仮説を立てて教育実践を行い(授業研究含む)、仮説の検証及び考察を行う。        
  • グループ内で、互いの授業を見合う機会を設定する。(ミニ授業研)        
  • 公開授業週間に授業を公開する。        
  • 毎月1~2回を研究日とし設定し、推進は各グループで行う。        
  • 各グループで推進計画を作成する。        
  • 全校研究を2回行う。(4月と7月)        
  • 研究のまとめは2月の校内研究発表会で行う。        
  • 研究紀要はCD-Rで作製する。

4 研究推進の日程


校内研究研究日
27日 全校研第1回(希望調査) 
 15日(研究テーマと設定理由)
 12日(研究内容と方法の具体化)
29日(グループ仮説の設定)
3日 全校研第2回(構想発表)13日(仮説検証の視点を設定)
 17日(実践研究/授業研究)
 7日(実践研究/授業研究)
10 5日、23日(実践研究/授業研究)
115日~16日 公開授業研究会実施6日(研究授業の準備)
20日(グループ仮説検証)
12 4日(仮説検証/考察)
 18日(考察/研究のまとめ)
29日(考察/研究のまとめ)
5日、8日 校内研究発表会
末日 紀要原稿提出
 
中旬 紀要完成 

Ⅱ 研究のまとめ


1 研究の成果と課題


 平成24年度は、児童生徒の良さを生かした授業実践において、主体性を育むことを目指して児童生徒の実態を踏まえ教員を少人数の研究グループに分けて研究を行ってきた。研究グループは、本校の教育課程によって分けられた類型別に編成した。A類型(当該学年の教育課程)、B類型(下学年の学習内容を行う教育課程)、C類型(自立活動を中心とした教育課程)、C類型はさらに、視覚における実態差により2グループに分け、計4グループとした。
 A類型グループは、児童生徒一人一人の「前向き」「まじめに取り組む」などの良さを大事にしながらコミュニケーションの充実にかかわる改善を図りたいという思いから、各教科の中で意図的にコミュニケーション活動を盛り込んだ授業を展開した。成果として、グループ内検討により複数の教師が一人一人の生徒の姿をとらえることができたことや、指導案の検討による授業改善が図られ生徒から達成感を伝えることができた。課題はコミュニケーションの定義づけや児童生徒の背景や変容にあわせて指導を継続していくことである。
 B類型グループは、授業や生徒指導などの指導場面を検証し、教育活動全体を通しての課題や目標、教師の願いを分析・共有することで、主体性や自己肯定感を育む授業づくりができるのではないかと仮説を立て研究を推進した。成果としては、個別の指導計画やICF関連図から見える生徒の「良さ」や教育的ニーズと授業を考える上での配慮事項等をグループ内で整理、共有できたことである。しかし、これらの要素の整理に時間をかけすぎたために、年間指導計画に基づく各教科の連携や指導内容の検証をふくむ授業づくりに着手する時間が十分につくれなかったことが大きな課題である。
 C類型の視覚のある児童生徒を対象としたグループは、生徒の「良さ」として、「視覚によって周囲の状況を把握しやすいこと」と「コミュニケーションの中で表出が促されやすいこと」等に着目し、それらを使って児童生徒個々の主体性につながるような選択能力を育むよう授業改善を図った。成果として、選択行動の“芽生え”が見られ、「選択できるか」という切り口で対象児童生徒のアセスメントを丁寧に行う機会が得られたことは、今後の授業を組み立てる指針とする上で貴重な資料となった。また、来年度への引き継ぎ資料を作成することもできた。課題としては、視覚に限らず、触覚や聴覚をなども使い複合的な要素で指導をしなくてはならないことと、選択行動についても継続した指導を必要とすることである。
 C類型の視覚に困難さが疑われる児童生徒を対象としたグループは、各感覚器官に訴えかける教材・教具やアプローチを整理、共有することにより、高度な認知発達を促す授業づくりを目的に研究を推進した。成果として、複数の教師によるアセスメントや授業評価を行うことで客観性を高め、授業改善を図ることができた。良さを生かした活動や好きな活動等を多く設定することで活動に対する理解が深まり、児童生徒の表出場面が増えたことからも、主体的に取り組むことができたと考える。課題としては、細やかなアセスメントの継続と、正しく目標設定、評価を行うための専門性の向上が必要である。
 また、自主研究で行われた教育相談グループは、テーマを「特別支援教育における学校コンサルテーションの在り方に関する研究~学校全体の校内支援体制の構築を目指して~」と立てて研究を推進した。成果として、コーディネーターとして地域の各学校等に対し、研修や学習会の中で学習面や生活面等で困難を有する子ども達への理解啓発や、町内の各種相談機関の紹介等を行ってきた。また、小学校から中学校への移行において、両校の教員と保護者が出席するケース会の提案、実施ができたことは、学校間連携につなげることができた。課題として、相談校の校内支援体制の構築・整備までは難しかった。学校種による文化の違いを理解した上で、機能的な支援体制の構築を提案していくことが必要である。


2 研究のまとめ


 今年度の研究では、研究主題を「授業実践において、1人1人の良さを生かすことで、主体的に活動する喜びや力を身に付けられることを明らかにする。」として、類型別にグループを編成し単年度で研究を行ってきた。
 成果としては、複数の教員で児童生徒の「良さ」について言語化することで、多角的な視点で児童生徒の実態を把握し共通理解を図ることができたことである。さらに、言語化された「良さ」をもとに授業の評価と改善を繰り返すことで、教材・教具や指導の手立てが児童生徒の実態により合わせたものとなり、一定の主体性を育むことができた。また、グループ編成については、類型別としたことで小・中・高の学部間交流ができ、普段接することの少ない児童生徒について知る機会となった。
 反省点としては、推進方法にグループ別にばらつきがあり研究の到達度に差異が生じたことである。また、研究のまとめでは、時系列の記載や客観性にかけるところがあった。これは、本校は職員の年齢層が低く研究についての素地が未熟であるという実態があり、全校研究を推進する上で各グループに研究テーマや仮説設定、推進計画を委ねた結果である部分が大きい。研究の方法について、全校研究会での説明のみで終わらせず、より具体的な指針を研究部から提示する必要がある。
 次年度は、この点を改善し、より充実した研究となるよう推進していきたい。